新幹線通勤のできる自治体の地価がこれから伸びる!?

東京に人口が集中する傾向が顕著になっている昨今、東京への通勤が難しい、2時間以上掛かるといった地方の自治体は人口減少に悩んでいます。
その打開策として、最近では新幹線が通っている自治体では、その自治体に住んで東京などに通う人に対して、新幹線定期代の一部を負担する、といった動きが見られています。

もしこの施策がうまくいけば、都心への通勤に便利な都市として、地方都市が息を吹き返す可能性もあります。
実際にどのような自治体が新幹線通勤の促進に取り組む、成果を出しているのでしょうか。

新幹線通勤の対する補助を行う自治体が増えている

数年前から、新幹線定期で東京などに通勤をする人に対し、一定期間新幹線通勤費の補助を行う自治体が増えています。
具体的に名前を挙げていくと、埼玉県熊谷市、長野県越後湯沢市、長野県佐久市、栃木県小山市などになっています。

埼玉県熊谷市では熊谷駅に新幹線が通っており、東京駅までわずか40分足らずで通勤することが可能です。
熊谷市の取り組みを見てみると、40歳未満で熊谷市に定住する意欲があり、住宅をすでに購入している人を対象に、2年間を期限として毎月の上限支給額2万円までの支給を行っています。
最大で48万円の支給を受けることが可能になっており、子育て世帯にとっては大きな支援額となるともいえます。

また新潟県湯沢町ではさらに支給額が大きく、毎月の上限を5万円とし、最大10年間まで支給を受けることが可能になっています。
なんと総額で最大600万円にもなり、上越新幹線であれば東京へも1時間15分で通えることから、不動産価格の安い湯沢町に住宅を購入し、東京や大宮などの都心に通勤する人間を取り込むという考えが見て取れます。
湯沢町は過去には1000万人を記録した観光客が、近年ではその半数以下に落ち込みを見せるなど、税収減という大きな悩みを抱えています。
その打開策としてなんとしても若い世帯に移り住んでほしいという考えがあるのでしょう。

栃木県小山市では2017年6月に新幹線通勤補助を行うことを発表。
現時点では補助金交付要綱の策定中ですが、新幹線の駅を利用できる自治体に、こういった新幹線通勤非補助を行う動きが出てきていることは間違いありません。

新幹線を使えば東京へ1時間以内に通えるエリアは

しかし新幹線通勤ができるといっても、行ける駅は上野や大宮、東京になります。
現実的に通勤を行うのでしたら、東京や上野などのターミナル駅には1時間以内で通勤をしたいもの。
どの辺りの新幹線野駅まで、東京駅に1時間以内に通えるのかを見てみましょう。

東海道新幹線では、三島は十分に1時間以内に通える距離ですが、新富士になると1時間をややオーバーします。
上越新幹線では高崎が1時間以内で、上毛高原で1時間超え、東北新幹線を見ると宇都宮が1時間以内となっており、那須塩原はやや1時間を超えてしまいます。

三島市、高崎市、宇都宮市が新幹線通勤が現実的に考えられるレベル、新富士、群馬県利根郡みなかみ町、那須塩原市はやや苦しいといえるでしょう。
なお那須塩原市では平成32年までの期間限定として、新幹線通勤費の補助を、市内に在住する人に対して行っています。
宇都宮市、高崎市では同様の補助を行っていないことを考えると、逆に1時間を超える自治体のほうが、導入に積極的だといえるでしょう。

実際に地価は上がっているのか

新幹線沿線の自治体で通勤費の補助が拡大していることはわかってきましたが気になるのは、実際に人口が増えているのか、そして地価が上昇しているのかという点です。

すでに新幹線通勤日の補助を行っている熊谷市の人口を見ると、現在は約1,980,000人で2000年をピークに徐々に減少しています。
ただ熊谷市でも新幹線通勤費の補助を開始したのは、2016年ですから、まだ人口動態に目をみはるような結果を表すには、時間がかかるといえるでしょう。

熊谷市の土地の売買相場の変動を見てみると、2017年と2016年では市全体で見ると4.5%の下落傾向にあります。
ただし駅周辺は上昇を見せており、駅から徒歩7~8分の場所も横ばいになっています。
人口が減少する流れの中でも駅周辺の地下が上昇しているということは、通勤に便利な場所であれば、地価が上る見込みもあるとも言えるでしょう。

埼玉県でも熊谷市に近い深谷市の地価推移を見ると、深谷駅周辺のみ地価を維持しており、そこから少し離れていくとどこも地価が下落しています。
新幹線の駅があり、通勤に使えることは地価にも少なからず影響をしていると言えそうです。

まとめ

東京への通勤に新幹線を使える自治体は、そのメリットを活かそうと新幹線通勤費の補助を積極的に行おうとしています。
東京から離れる自治体ほど支援は厚く、東京から離れた場所は元々不動産価格も安いこともあり、総合的な生活にかかるコストを抑えながら、郊外でのびのびと生活することも不可能ではなくなっています。
ただし期限付きでの支給が基本となっており、限られた期間の支給で実際に効果があるのかは、まだ未知数な部分もあるといえます。

交通インフラはもちろん重要ですが、買い物や教育などの環境面、そして人口構成が本当に変わってきているのかなど、若い人の住みやすさの改善が見られたら、これらのエリアも投資対象になっていくのかもしれません。