不動産会社に勤める人って普段なにやってるの?初心者が業界の人に聞いてみた〜第1回:売出し物件の獲得方法〜【2024年最新版】

不動産を買いたい、売出したいと思っても、ネット上にはいろんな情報が溢れかえっており、何が今の自分に必要な情報なのかがわからないという方も多いのではないでしょうか。

不動産の売買にかかわらず、この情報化社会ではいかに正しい情報を仕入れてそれをいかに適切に利用していくかが物事の成否に大きく関わってまいります。

本連載の趣旨は、「不動産の素人」を自認する筆者が不動産会社の中の人などから聞いた情報をもとに、「不動産売買の初心者にもわかりやすく」業界の情報を発信しようというものです。

第1回目は不動産売買における「商品」に位置する売り物件を獲得するための営業、いわゆる「物上げ(ぶつあげ)」をどうやっているかについて取り上げます。

不動産会社の営業は自社で扱う売り物件を獲得するためにどのような営業活動をしているのでしょうか。

とにかくまずはチラシから?ポスティング

自宅のポストに「あなたの家を売ってください!」といったチラシが投函されていたという経験は多くの方があるのではないでしょうか。

筆者は「今どきチラシを撒いてもそれほど効率的ではないのでは?」と思ってしまうのですが、実際の現場の声はどうなんでしょうか。

都内に2店舗展開している不動産会社に勤めるS氏に話を聞きました。

「うちは地域密着の小さな会社ですが、ポスティングは基本の戦略として今も昔も力を入れてやってますよ。入社してすぐの新人には任せられる仕事が少ないので、しばらくは投函作業をメインでやらせます。効果があるかどうか正直なところをいうと、年々反響は鈍ってきてるなという印象です。でもなぜウェブ広告など他の施策に舵を切れないかというと、実際に店頭に来てくださるお客様や電話してくださる方の一定数はチラシを見てくれたことがある人で、チラシを撒くことをやめてしまったときにどれだけお客様が減ってしまうのか読めないからなんです。自分たちでも旧時代的なことをやっているなとは自覚していますが、かといってネットなどの媒体に全力でシフトするっていうのは怖くてとてもできません。」

最近はただ「家を売ってください!」的なつくりだと全く効果が得られないので、自宅を売る方に向けたちょっとした不動産売買におけるニュースやノウハウといったコンテンツを入れたチラシを作るのが主流になっているとか。

うっかりふむふむと読んでいて、最終的にその会社にお願いしてしまったという方もいらっしゃるかも知れませんね。

今や定番のサービスとなった一括査定サービスから売主様を獲得

中古車や引越しなどでおなじみ感がある一括査定サービスは、不動産売買の業界でもすっかり定番サービスとしての地位を確立してます。

中堅どころの不動産会社で主任を任されているO氏に一括査定サービスについて聞きました。

「他の業種の一括査定もそうだと思うんですけど、結構な割合で冷やかしやお客様との直接のコンタクトが取れないなどの問題がある案件ばかりです。おそらくポイントサイトのキャンペーン経由でポイント目当てのお客様が一定数いるんでしょう。でも仕組みとしては売主様にとって便利なものですし、家を売ることになった方の多くが利用しているというのも事実。今では一括査定サービス経由のお客様が1番割合が多いですね。」

一括査定サービス経由だと多くの場合が他の不動産会社と競合してしまう格好になるかと思われるのですが、自社に売却を任せてもらうためにどのような取り組みをしているのでしょうか。

「それは企業秘密です(笑)というのは冗談で、大したことはやっていないですね。とにかくまずは電話してご挨拶し、売主様のご要望を正確に把握したうえで査定書を作成します。査定額は、ぶっちゃけ相場より若干盛った金額で提出してますね。他の競合も売主からいい印象を得るために査定額は相場より高めに出しているはずです。そんな中で自分たちだけが妥当な金額を提出しても『あそこの会社はうちの物件を評価してくれなかった』と悪い印象を持たれてしまうだけですからね。お客様に対しても、さらには私達にとっても建設的とはいえない対応ですけど、こればっかりは構造上仕方がないのかなと思ってます。」

確かにまずは媒介契約(不動産の売却を依頼する契約のこと。くわしくはこちら)を締結しないことには始まりませんが、双方にとって無駄なことと知りつつやめられないというジレンマを日々感じているようです。

なお、高査定というものを見抜くのに一番確実なのは「自宅がいくらくらいの価値があるのか」という相場感を把握しておくことです。

自宅の価格を簡単に調べる方法については以下のリンクをご覧ください。

誰にも知られず自宅の相場価格を調べる究極の方法【土地・戸建・マンション別】【2024年最新版】

街で見かけた気になる物件の登記簿を取り寄せ、直接登記名義人にアタック

究極のアナログ戦略ともいえるのがこちら。

とにかく街を練り歩き、空き家ではないかと思われる物件や売り頃と思われる物件にあたりをつけて法務局やネットから当該物件の登記簿を取得し、その登記名義人(所有者)に直接「売らせてください」と直談判する方法です。

効率などを考えると考えられないやり方ですが、先程の地域密着型の不動産会社に勤めるS氏にまた話を聞きました。

「長年業界で働いていると、なんとなく売りに出そうだなと感じる物件がわかってくるんです。いや、ほんとに。外観からでも注意深く見ていると、不思議と直感が働くことがあるんですよ。まぁそういったケースは稀なんですけど、買主様と話したり成約事例をレインズ(不動産会社のみが使える売買物件などの情報ネットワーク、詳しくはこちら)からチェックしていると今ニーズがある物件っていうのがどんな物件なのかっていうのは自然とわかります。
街でそういうニーズが高そうな物件を見つけたら住所を調べて、ウェブから登記簿を取得します。登記簿っていわば『公開されている個人情報』ていうやつで、物件の所有者や建築年などはもちろん誰がどこからいくら借り入れたかという情報まで載っているんです。もし自分が同じことされたらと思うとぞっとしますが、こちとら物件預かって売りさばいてなんぼの商売なんで。使える情報やサービスはとことん使い倒しますよ。」

まさかこんなやり方がまかり通っているとは驚くばかりでした。

ターゲットになってしまった物件のオーナーには思わず同情してしまいます。。

まとめ

いかがでしょうか。

不動産会社に限らない話ではないのかも知れませんが、インターネットが普及した現代において(一括査定サービスなどはあるものの)かなりアナログな活動という印象を受けたのではないでしょうか。

もちろん同業界に在籍している方の中には「そんなやり方はもう古くてやっているところはごく一部だ」というご意見もあるかと思いますが、ごく一部であってもこういったやり方が慣例となっている会社があるというのは驚くべきことです。

個人的な感想ですが、旧態依然とした営業手法ではなく時代に合わせて柔軟な取り組みを実施している会社なら安心して任せたいと感じますので、斬新な手法や最先端の売却サービスなどに加盟している不動産会社さんには好印象を持ちます。

売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、普段どんな方法で売主様を探しているかをチェック項目に入れてみるのも効果的かもしれませんね。